2006年06月27日

荒木飛呂彦先生講演会レポート

荒木飛呂彦先生講演会レポートをアップしているサイトをご紹介。
知らなかった事が沢山知れて面白かったです。
言われてみれば、モリゾーは鳥山明先生っぽいですよね(笑
概要

日時:平成18年6月24日。会場:東海中学・高校(愛知県名古屋市)。「サタデー・プログラム」内の一講座として開催される。
開始前

事前の申し込みで大量の聴衆が見込まれ、1700人分の整理券が配布される。それ以上の人数に関しては各教室でテレビ中継。朝8時30分からの配布開始時点で、1000人を超える人数が校舎内の廊下に長蛇の列を作っていた。さらに、当初の予定では12時30分講演開始だったのが、前の講座との入れ替えに時間が掛かるため、12時45分からに変更。会場には数名の私服警備員が配置された。
あいさつ

(壇上右手から荒木先生登場。黒のジャケットと穴開きジーンズ。遠目に見ても、シワひとつない驚異的な若さ。)

こんにちは。荒木飛呂彦です。東京から来ました。ハハ。ちょっと、かなり緊張しています。朝起きたら1人でずっと仕事してますんで、1日に会う人間って言ったらアシスタント5人ぐらいなんで、一生分の人間に会ったみたいで(笑)。かなりヤバイです。芸能人じゃないんで、笑いをとったりだとかネタを期待しないでください。あと、だらだらいきますんで。
講演を引き受けた経緯

今年でマンガ家生活25年になる。「昔読んでいました」と言われるのが若いころはいやだった。昔の人だと思われているようだから。しかし今はありがたいと感謝している。先生やテレビ局のディレクター、医者など35歳ぐらいの立派な人からよく言われる。若いころは自分や出版社のために描いていた。今は若い人に恩返ししたい。今回高校からの誘いがあったが、集英社の隅に置かれていた。編集者は「こんなのあるけど、名古屋だし、遠いし、行かなくていいっすよ」みたいな感じで見せてきた。しかしありがたいと思って引き受けた。30人ぐらいの教室でやると思ってOKした。来てみてびっくり(笑)。
マンガは何故描くのか

される質問No.1は、昔からマンガが好きだったのか?何歳からマンガを描いていたのか?と言うこと。それについて30歳ぐらいから分かってきたことは、自分の家族関係が影響していると言うこと。断っておくと、家族とは仲はいい。父親は専売公社のサラリーマン、母親は専業主婦。普通の少年だった。妹は一卵性双生児。妹2人の不思議な連帯感、心のつながりがあった。兄が入っていけない、疎外感。

エピソード。おやつを母親が3つ用意する。妹が1個ずつ食べて、「どうする?」「ちょっと食べてみようか」「だまってりゃわかんねえよ」。帰宅して冷蔵庫を見ると「何だねえのか」。しかし育ち盛りだから、古いかまぼこの切れ端などを食べていた。嘘はいつかバレる。母「食べなかったの?」→「あのやろー!」→妹とケンカに。ちょうだいと言えばあげるのに、陰謀が嫌。しかも毎日。チャンネル争いも多数決で取られる。やがて家に帰りたくなくなる。「家出してーなー」。ひねくれていた。

1970年代、マンガのルネッサンス。手塚治虫、巨人の星など。マンガは1人で読める。自分で書いてみよう。図鑑や、絵が好きだった父の画集を見て描くのが楽しい。家に帰るのが楽しみになる。動機は救われるから。「なければ、グレて妹を殺していたかも(笑)。結構深刻なんですよ。」。ゴーギャンがタヒチに絵を描きに行った話にひきつけられた。

中高と進学校。友人に見せる。ファン1号のような友達がほめてくれる。その気になって、マンガ家になろうと思う。親には内証。勉強するふりをして、本をよけて描いていた。そんな高校生活。手塚賞など、高1から投稿。落選→何でか分からない。当時は新幹線が無く、特急でも東京まで4時間。しかし編集部に欠点を聞かなければならない!と思う。小遣いをためて、受験と重なるような時期に東京へ。そこそこの成績なら大学までエスカレーターで行けたが、どうしてもやらなきゃいけない、マンガ家になるしかないと思う。親に認めさせるには、デビューするしかない。当時同じ17歳で『キン肉マン』のゆでたまごがデビューし、それに焦る。さらに年下の桂正和がデビューし、連載。他にも北条司、こせきこうじ、次原隆二なども同世代。一方で親からの圧力もある。

31ページの作品を前日まで徹夜して書いて、東京へ。朝出発して、昼に到着。最初小学館のサンデーに持ち込もうとしたが、でかさにビビる。となりの集英社は6階建てで、「小さい方に先に出そう」。受付のお姉さんに「予約ありますか?」→そんなのいるんですか?昼の12時で誰もいないが、1人大学を出たばかりのヒマな編集が。6階に行ってくださいと言われる。

当時の編集部は怖かった。ドラゴンボールの「トリシマさん」(←鳥山明のことか、編集の鳥嶋さんか?)が原稿を袋からチラっと出した瞬間、表紙を見ただけで「見たくないんだよねー」と言われて書き直し。殺気立っていた。

編集が「持ってきたの?」と言い読み始めると、「ホワイトしてないじゃねーか」。徹夜明けも相まってクラクラしてきた。ページをめくるたびに「きったねーなー」。なんだか眠くなってきた(笑)。その人は身長180センチぐらいで怖い。読み終わると「ちょっと面白かったかな」。こことここ書き直してこいと言われ、5日後が手塚賞の締め切り。ほめられたから徹夜して書き直し。手塚先生、ちばてつや先生に読んでもらえるかもと言われる。それが『武装ポーカー』。31ページの作品を60−80ページ書き直した。親に「載ったんですけどー。デビューさせていただきます」。こうしてマンガ家に。しかしあくまで載っただけ、編集はこれから育てようとしている。
マンガの描き方

ここで質問。何になりたいと思ってる?マンガ家になりたい人。(何人か手を挙げる)。医者になりたいとか、ジャニーズになりたいとか。じゃあ今日はマンガ家になりたくない人向けのマンガの描き方について話します。

電車でマンガを読んでいる人がいて、10メートルぐらい離れていても何を読んでいるかわかることがある。『ワンピース』読んでるな、とか両さん読んでるな、とか。自分の頃は『リングにかけろ』や、鳥山明の『アラレちゃん』とか、遠目で見ても分かる。そう言うのが大事だなと思った。1981年からそう言うことを考え始めた。どうやったら誰でも分かる個性を描けるか。

この世で一番簡単な絵は何か。モナリザなんかは難しい。深い。(ここでプロジェクターの上にスケッチブックを取り出し、ペンを持つ。会場どよめき。しかし何も描かずに手を止める)これを雪の絵ですとか言って美術の先生に持っていったら怒られる。だけどマンガだとこれで原爆の光です、とかある。これで原稿料を貰っている。個人名を出すと怒られるかな(笑)。真っ黒に塗って地獄、とか。『デスノート』の最終回みたいに(会場拍手)。人の原稿料は知らないですけど(笑)。

(資料を映す)バーネット・ニューマンという人の絵。オレンジに塗っただけ。現代絵画では認められている。(さらに黒の長方形を2つ並べた絵、そしてアグネス・マーチンの鉛筆で線を引いただけの絵)。

マンガも簡単な方に行こうとする。(ペンで点を書く)これは誰でもかける。(その点から線を延ばして、●ッキー●ウスのような輪郭を描く)こう言うのを公の場で描くと怒られる(笑)。著作権で。

(次々と資料を出す。スマイルマーク、一瞬ミッキーマウス、会場笑い。さらにモリゾーとキッコロを出して)鳥山先生のデザインかと思ったら違ったんですけど(笑)。誰が見ても分かります。(ピカソの絵を出して)ピカソだと分かる。

死んだ人からまねるのはパクリじゃないと思っているんで。今仕事している人から影響を受けるのはパクリだと思うけど。先ほども言ったが、ゴーギャンが好き。奥行きがあるのに色をエリアで囲んで描く。地面がピンク、青だったりする。私はあまりアニメになっていないけど、アニメになったときスタッフから「承太郎何色ですか」と聞かれる。しかしそう言う概念が無くて、(資料を出す)ジョルノをピンクで塗ったりブルーにしたりする。計算して塗る。パワーが発揮されるように。それを80年代に研究して取り組んだ。西洋美術の陰影法や、彫刻を見ながらポーズを描く。こう言うやり方で個性を作っていく。劇画ではあまりやらないけど、そうやって勉強していく。それがジョジョ。

(資料出す。リンかけのギャラクティカ・マグナム。会場笑い)。これを評価している。車田先生と一目で分かる。ストーリーが単純化していく。
(資料)
                         <内面>
                            |
          バガボンド           |仮面ライダー  ハチクロ
         ろくでなし   恋文日和    |  ナルト  ワンピース
                            |     ブラックジャック
          北斗 .              | タッチ      サザエさん
<古典的・リアリティ>――――――――――――――――――――――― <表現主義>
        あしたのジョー      こち亀 | ドラゴンボール  ドラえもん
        ジョジョ          ゴルゴ13 |           遊戯王
              .   アキラ  デスノ |    リングにかけろ ミッキー
       .  カムイ伝  コブラ  バスタード|鬼太郎 バビル2世  キャプ翼
           .                 |
                      <ストーリー構築>

右の方にあるとアニメになりやすい。自分がどこにいるのか。それが分からないと、編集に「何描いたらいいんですか」と聞くようなマンガ家がいる。『リンかけ』、『キャプテン翼』はすごい。絵を単純化し、ストーリーも単純化。マンガ史に残る傑作。『バガボンド』、『ろくでなしブルース』は正統派。『ハチクロ』、『ワンピース』は内面を描いているがデザインが凄い。

古典的な方法でリアリティを追求するのがジョジョ。もともと謎に興味があった。無人島とか。キングコング、ネッシーは「マジでいると思っている」。サスペンス。なぜゴーギャンはタヒチに行ったのか?など。

超能力、エネルギーそのものを描きたい。「波紋という波で行こうか」と言うのが第1期。2部も終わりに近づき、編集から「新しい必殺技がいるよ」と言われる(会場笑い)。守護霊が後ろから出てくるのはどうですか→編集「えー、分かんねえよ」(例の180センチの担当)。そばにたつからスタンド、スタンドバイミーみたいに。当時のジャンプはハードで、インターバルなし。第2部が終わったら次の週から第3部だった。承太郎がスタンドで戦おうと決める。

当時ピラミッド方式(トーナメント)が流行っていた。それってバブル経済と同じで、最後どうなるのか疑問だった。ロープレ、双六みたいにその場で戦っていこう。→旅行でいこう。世相から超能力を取り入れ、スタンドに。そうやってジョジョが生まれた。これが自分の描き方。サスペンス、古典的手法。スタンドはファンタジーだけどリアリティを追求。心の中のパワーを表現するのがテーマ。
生徒との対談

(準備で先生は一旦舞台裏へ。壇上中央にイスを4つ並べる。荒木先生再登場。先生は右から2番目のイスでで足を組んだり戻したり)

――少年時代熱中したことは?
マンガ、映画。コレクションは全然しない。立体も作らない。小説など、空想の世界にいたい。ものごとをやりとげるにはダビンチから始まる先輩を尊敬すること。そう言う人たちの情報を読み取るのが重要。発明したものを学んでいく。

――少年時代に好きだったマンガは?
梶原一騎『あしたのジョー』『巨人の星』『空手バカ一代』など。スポ根だけど、来週どうなるのかと思わせる。一番凄かったのは、『愛と誠』。主人公がスケバンにナイフで刺されて、合併号で次週が休み。「早く本屋開かないかなあ」と思った。

――絵や図工は得意だったのか?
写生、スケッチは得意だった。小学校のときに文部省の賞に選ばれたこともある。

――杜王町は故郷の仙台と関係あるのか?
子供の頃の仙台は古い町だった。80年代から新しくなり、知らない人が住み始めた。それが不気味で、その体験が杜王町になっている。自分の町は好きで、逆の愛。ただ実名を出すと怒られそうだから(笑)杜王町に。

――単行本コメントでおじいさんの思い出が多いが、ジョジョの系譜が1代おきなのと関係があるのか?
そうかもしれない。子供はよく田舎に預けられた。祖父はものを作るのがうまかった。防空壕に探検に連れて行ってもらって、ミステリーのようで楽しかった。

――中学高校の生活は?
部活はスポ根が好きだったので、『おれは鉄平』を読んで剣道部に。強くなくて、格好だけだった。

――成績は?
試験勉強中も絵を描いていたので、そんなにいいわけがない。

――恋愛は?
男子校だけど、恋愛はした。「あんまり言うとさ、現在の人間関係に影響が出るからさ(笑)」

――それぞれのジョジョのモデルは?
「えーっ」(会場笑い)。モデルはいない。スタローン、シュワルツェネッガーなど80年代に筋肉の映画がはやった影響。1部描くと、やっていない部分が出てくる。「まじめすぎたなー」→2部では明るい奴を出そう。イーストウッドはアクション俳優なのに「走るな」と言われたらしい。そのアドバイスが凄いなと思ったので、承太郎はあまり動かない。監獄にいるけど、スタンドは速い。

――6部のアイリーンは『ゴージャスアイリン』と関係が?
遊び心だけで深い意味はありません。すいません。

――スタンドが出てきて以降、ボスが時間を操ることが多いのは?
時間を支配できる奴がいたら無敵だろうな、どうやって主人公は勝つだろう、と思う。重力とか物理的なものを支配できるのは強い。それを表現できるのがスタンド。

――ジョセフだけ「短命で1人の女性しか愛さない」に当てはまらないのは?
3部で終わるはずだったが、4部を描かなきゃいけない(会場笑い)。未来過ぎるとだめ。近未来がいい。しかしそれだと主人公がいない。年齢が合わない。→愛人しかないかな(会場笑い)。

――なぜ1つの家系?
自分は誰から生まれたんだろうと考える。父、祖父より上の代は分からないが、不思議な気分、誇り高い気分になる。愛人から生まれても血筋はあるのだから、それを大切にしよう。子供のころの思い出、生い立ちをストーリーに入れよう。ディオはどんな育ち方をしたのか、とか。

――マンガを一言で表すと?
「えーっ」。なかったらヤバイ、すごい重要。ここに来たのも中学生に熱い気持ちを伝えようと言う思いから。

――洋楽の名前が出てくるのは?
単なる趣味。ロックを聞くと母親が普遍性がないからだめだと言う。しかし、ロックもクラシックのように残るかもしれない。応援する意味もあってオマージュで出している。しかし最近バンドの名前がなくなってきてヤバイ。

――「オラオラ」「WRYYYY」など独特の擬音が多いのは?
ロックからの影響。リズムなど。最近ではソールドアウトと言うバンドがジョジョの影響を受けていてうれしい。

――絵柄の変遷について
古典的なところを追求しているので、前の絵にはこだわっていない。

――新人賞の歓迎会ではどう新人に接するのか?
絵と顔が一致しないが、がんばってほしい。自分は秋本先生に「がんばって」と言われたり、車田先生に「最後のコマが泣けたよ」と言われて励みになった。自分もちゃんと読んで批評したい。

――キャラのその後を番外編で描くのは?
まずその後どうなったのかが気になった。しかしファンレターで誰々を出して欲しいと言われるが、話は完結しているので続きは描きたくない。『バオー来訪者』も続きそうな終わりかたをしているが、続きそうな感じで終わっているのがいい。作者としては描ききったと言う感じ。

――ではジョセフが再登場したのは?
長生きだから。死んでいないからね。

――尊敬する人は?
「実在?」(会場笑い)。マンガ家全般。絵はこうやって見るんだと教えてくれた学校の美術の先生。編集者はゴルフのキャディーのようなもの。もうすこし右を狙った方がいいですよ、とか。編集者と仲良くしなくてはいけない。

――今の担当編集者とは?
「いやいや(笑)」

――ジョジョを一言で言うと?
人間の謎を描きたい。何でこんなことするんだろうって人がいるじゃないですか。永遠のテーマですね。

――人間賛歌?
悪い風に見ちゃだめなんですよ。犯罪した人でもなんでそうしたんだろうと考える。

(時間が来たので荒木先生退場。会場拍手。)

→ 荒木飛呂彦先生講演会レポート

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